ALSとは
ALSとは、運動ニューロンという身体を動かすための脊髄と脳の神経系が障害を受け、脳からの命令が
伝わらないことによって筋肉が縮み、力が弱くなり、筋肉がやせていく病気です。手足、のど、舌の筋
肉や、呼吸に必要な筋肉も徐々にやせていきます。性別では男性にやや多く認められ、年代では60~70歳代に多く見られます。人口10万人に1~3人が発症すると言われている、患者さんの数としては決して多い疾患ではありません。約90%は遺伝しないと言われている一方で、約10%は家族内で発症することが分かっており、家族性ALSと呼ばれています。指定難病に指定されており、原因は不明です。神経の老化や、興奮性アミノ酸の代謝異常、酸化ストレス、たんぱく質の分解障害、ミトコンドリアの機能異常など、様々な学説がありますが、結論は出ていません。
今後の生活とその対応
ALSは常に進行性の疾患であり、徐々に全身の筋肉がやせて力が入らなくなり、歩くことが難しくなります。筋肉の痙攣や痙縮による疼痛には、毎日のリハビリテーションを早期に開始することが大切です。筋弛緩薬が処方されることもありますが、筋力低下をもたらす可能性もあるため、主治医の指示に従いましょう。のどの筋肉が弱くなると声が出しにくくなり、話すことでのコミュニケーションをとることが難しくなるため、早い段階で意思伝達の方法を検討しておくことは必須です。水や食べ物などが飲み込みにくくなるため、食物を柔らかくすることや、食べやすい大きさにするなど、形態を工夫する必要があります。飲み込みにくさがさらに進行した場合、胃ろうや点滴にて栄養補給を行う方法があります。また、痰や流涎が増えることがあり、吸引器が必要になっていきます。呼吸筋が弱まると、呼吸がしにくくなるため、人工呼吸器の使用を検討していきます。人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で亡くなることが多いと言われていますが、発症パターンや経過、症状も様々であり、個人差の大きい疾患です。
家族とALSについて考えること
患者様は、「家族に迷惑、負担をかけている」「体を動かすことができないけれど、体が痛いことは分かる」「話すことはできないけれど、話の内容は分かる」状況であり、ご家族様は介護に伴い身体的にも精神的にも負担が大きくかかっていきます。今までは問題なくできたことができず、すべてにおいて時間がかかるようになり、お互いが大変つらく、もどかしい状況が生まれることがあります。私たち介助者は、双方の思いを受け止め、何度でも寄り添うことが大切であり、精神的な介入は特に重要なポイントとなると考えます。
ホスピスにおける看護介護の役割について考えること
全身の筋力低下が起こってくるため、食事、移動、排泄、体位変換等、日常生活全般についての援助をはじめ、全身状態の観察や介入、経管栄養や人工呼吸器等を使用されている方も多いため、その管理が必要です。「人工呼吸器」と聞くと、ケアスタッフは不安感や恐怖心を抱く場合も少なくありません。そして、その不安な気持ちは入居者様に伝わってしまいます。しかし、看護師が持っている医療的な知識を共有し、共に経験することで、それらの思いを軽減、払拭することができると考えます。意思伝達も困難になるため、ナースコールの種類も検討が必要です。ケアスタッフと相談し、これからの状態予測についても情報を共有することや、勉強会等を開催し、医療機器使用中の方への統一したケアを提供できる環境作りも、看護師の役割の一つと考えます。
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